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作家紹介

湯浅商店(楽只苑) 湯浅聡士

陶器をいつも目にして育った少年時代。その頃から陶器が好きになりました。

楽只苑の創業は昭和40年から。現在、私で3代目になります。
昔は五条坂の西側にもうひとつの店舗の二階が住居になっていましたので、そちらで暮らしていました。裏手には倉庫があって、窯屋さんが出来上がった品をそこに運び入れていたんですが、小さい頃からよくそちらで手伝いなんかをさせられていましたね。中学生くらいの頃には、主に初代・祖父に教えられながらでしたけれども、商品の検品なんかもしていました。身近な存在でもありましたし、その頃から陶器が好きになりましたね。

でも大学を卒業してからは、東京でまったく関係の仕事についていたんです。一度外の空気を吸ってこないと「お山の大将」みたいになってしまう、と思っていましたので。そこで10年くらい普通に働いたあと、実家であるこの店に戻ってきました。

うちの店は窯元の作品と作家の作品で部門が分かれています。初代は主に作家物を、先代である私の父は主に窯元の作品を中心にやっていました。ひとつの店を、二人でうまく役割分担して営業していたんですね。現在は主に私が窯元を、専務が作家物を担当しています。ですが、私はまだ後を継いで2年目ですし、未だに陶器については勉強中の身ですね。むしろその勉強はずっと続いていくような気がします。

湯浅商店(楽只苑)湯浅聡士
湯浅商店(楽只苑)湯浅聡士さん
五条坂に面する京焼店。特に伝統的な京焼・清水焼を専門に扱っており、繊細な色絵作品を中心に、作家・窯元から自ら買い付けたこだわりの品を数多く取り揃える。
創業は昭和40年。建物は歴史的建造物指定を受ける京町家で、店奥には坪庭も備える。また、建物裏手にはかつての登り窯の跡も残り、清水地域の歴史を今に伝えている。
現在は湯浅聡士さんが3代目社長をつとめる。
▶ 湯浅商店(楽只苑)公式Webサイト

この場所で店を構えることは、本物の京都の焼き物を人に見てもらうという役割がある、と思っています。

うちの店は、作家や職人さんが手をかけて作っているもの、手描きで染付けをしているものにこだわって仕入れをしています。また、扱っている作り手さんも伝統工芸士の方の作品や、歴史の長い窯元さんのもの。これが京焼だ、清水焼というものだ、といえるものだけを扱っています。
京焼の店、清水焼の店と名乗るからには、「本物の京焼・清水焼」を売らなければならないと思うんです。そもそも京都の焼き物業界を支援していこう、といっても、支援するはずのものをきちんと売っていないのでは、おかしいですからね。
また、お店は、作品を買う人に見せる場所。いわば窓口です。置いてあるものによって、その地域の焼き物の特色や個性が伝わります。実際、京都の陶器屋にあるもの=京焼と考える人も多い。最初から「本物の京焼がほしい」とおっしゃる方もいます。だからこそ、生半可なものは置けません。五条坂という場所だからこそ、本物の京焼を見てもらえる場所がなければならない。楽只苑は、そんな場所であると思っています。

最近は、不景気の影響もあるのかもしれませんが、画一化されて、品揃えも雰囲気も何だか同じような感じになっているお店も多く見かけます。昔はちょっと形の面白いもの、凝ったものも窯元さんに注文して作ってもらっていたりしたのですが、最近はコストを嫌って無個性で作るのに手間のかからないものばかり仕入れたり、数件しかない規模の大きな窯元に注文が集まったりしている。作品を売る店が個性をなくしたら、売るものも個性を失い、地域の特色がなくなってしまいます。
お客さんの身になっても「この人の作品はこの店にしかないからここに行こう」「絵付けの茶碗ならこの店の品揃えがいいからここで買おう」と、考えやすいですよね。また、そう思って頂けた方が後になってもまたお店に、五条坂・ちゃわん坂に来ていただけるものと思います。


地域を盛り上げるには、地域にいるものが実際に行動をおこさなければ。そのために、先にたって、できることから動いていこうと思っています。

観光シーズンになると、京阪の清水五条駅から清水寺方面にはバスが出ているんですが、本当に駅からお寺まで直行になっていて、五条坂は完全に素通りされてしまっています。そうではなくて、実際に道を自分の足で歩いて通ってもらうようにする。五条の駅から、五条坂を上ってちゃわん坂を通り、清水寺へ…こんな風に街歩きのルートが確立して多くの人が街を歩いてくれるようになれば、ずっとこの地域は活性化していくと思います。そもそも、五条坂からちゃわん坂への道は、昔はひとつにつながっていたんですからね。

また、訪れる人に対しても地域に住んでいる側がもっと配慮するべきだとも思うんです。
例えば、日曜休日に観光にいらっしゃる方はたくさんいますが、清水寺周辺のお店は開いているのに、なぜか五条坂周辺のお店は閉まっているところが多いんです。休業日でなくても日も高いうちにさっさと閉めてしまうとか。これでは、せっかく人が来ても意味がないですよね。どのお店も入れなかったり開いているかどうかもわからないようじゃ、それこそ素通りです。

うちは日曜でもお店は開けていますし、正月も三が日に一日くらいは開けてもいいかな、と思っています。お正月は清水寺への初詣で人出も増えますしね。

いくら地域を盛り上げよう、と声高に言っても、実際に行動を起こさなければ盛り上げられません。
そのためにも、まずうちの店が先に動けば、ほかの方も動き出しやすくなるかもしれませんし、まずできることから始めていこうと思っています。

それに、街の活性化には、陶器屋や陶器にかかわる人たち以外の力も必要になってくると思います。食事所やみやげ物屋、この辺に暮らしている人も一緒になって、皆で盛り上げていくことができるのが、一番理想的ですね。